組織が本気で取り組みたくなる女性活躍

トピック&テーマ

2021年6月17日、NOKIOOはオンラインにて「90分腹落ちセミナー 組織が本気で取り組みたくなる女性活躍」を開催しました。
女性活躍を含めて多様な人材の活躍が欠かせないと言われている昨今において、「女性活躍が進まないもしくは、うまくいかない」根幹にある問題は何かを、NOKIOOの考えるダイバーシティー&インクルージョンと合わせてご紹介いたします。

目次

  1. 「女性活躍が進まないもしくは、うまくいかない」根幹にあるもの
  2. そもそも、何のための女性活躍なのか
  3. 女性支援から女性起点へ
  4. 女性活躍進みにくい、要因分析
  5. 多様な人材が活躍する組織になるための打ち手
  6. まとめ
  7. 研修に関するお問い合わせ
  8. 参考書籍について

「女性活躍が進まないもしくは、うまくいかない」根幹にあるもの

小田木朝子(以下、小田木):本日のテーマは「組織が本気で取り組みたくなる女性活躍」です。
“組織が本気で取り組みたくなる”
このフレーズの意味する所は、ここに意味づけしたものを皆で考えていきたいという思いもタイトルに織り込ませていただきました。
そしてサブタイトルの
“なぜ進まないのか”
“女性活躍を妨げているものは何なのか” こんなタイトルになっております。

最初の問題提起です。
「女性活躍が進まないもしくは、うまくいかない」
このテーマを、特定の誰かの問題だと片付けていませんか?

  • 女性の問題だよね
  • 女性に課題がある
  • 組織がダメ
  • 管理職がダメ

これを総称して、特定の誰かの問題だと片付けていませんか? 経営戦略として組織が本気で取り組みたくなって、かつ結果に繋がる女性活躍のためには、組織の問題と女性当事者の問題、それぞれ垣根なく、いろんな問題をオープンに広げて考えていく必要があると思います。その中から、女性だけでなく組織全体の働き方や仕事のやり方、マネジメントという点も含めて、それらをどうやってアップデートさせることができるのか、そのための着眼点を考えたいと思います。

沢渡あまね(以下、沢渡):おそらく多くの方は、なぜ女性活躍が必要かということはもう十分ご理解いただいていると思います。さらには、なぜ女性活躍がうまくいかないのか、リアルを十分持ってらっしゃると思うんです。そこから、周りの人や会社・組織に共感を得るためにはどこから突破して行ったらいいのか、そのためには一度問題を構造化して、組織の問題と当事者の問題を切り分けて考えていけたらいいなと思っています。

そもそも、何のための女性活躍なのか

組織で進める女性活躍
出典:『バリューサイクル・マネジメント』(技術評論社)


小田木:これが本日のスタート地点になります。ここから考えを進めていくにあたって、「そもそも何のための女性活躍なのか」ここから入っていきたいと思います。 この女性活躍を含めて多様な人材の活躍が欠かせないと言われているのは、なぜなんでしょうか?

沢渡:一言で言うと「時代の勝ちパターンが変わってきてるから」という話です。 時代の勝ちパターンが変わってきているというのは、

  • 人手不足
  • 少子高齢化が進んでいる
  • 技術革新が進んでいる
  • コビットナインティーンのような未知のリスクが増えてきている

このような中で、組織の中で抱えられる人数が限られてきました。答えやヒントが組織の中や過去に求められないようなイシューに対して答えを出していく場合、同質性の高い人が同じ職場に集まるような統制型(ピラミッド型)オンリーのやり方では勝てないわけです。
これからは、個人と個人が繋がり、組織のゴールや目指したいもの、ビジョンに共感する人たちを中外関わらず垣根を下げて、部署と部署、人と人、会社と会社が繋がって答えを出していくオープン型のやり方を部分的にでも取り入れていく必要がでてきたということです。
注意が必要なのは、統制型(ピラミッド型)が間違いというわけではありません。
統制型(ピラミッド型)とオープン型の二項対立を煽りたいのではないんです。 ただ統制型(ピラミッド型)の過去のマネジメントモデルだけでは答えが出しにくいので、部分的にでもオープン型にシフトしていく必要はあるよ、という前提に立つわけですね。

女性活躍の話と紐付けて話をすると、50年〜60年の間、日本が勝ってきた統制型(ピラミッド型)のやり方は見方を変えると、男性正社員終身雇用前提モデルと捉えることができると思います。週5日×8時間以上働けて、サービス残業も休日出勤も厭わず、24時間戦えますというビジネスマンの世界ですね。毎日同じ場所で、同じメンバーが集まって、飲みにケーションやタバコ部屋にも積極的に参加する人が出世でき、情報をもらえて、そこでのコミュニケーションを通じて上司に可愛がられていくようなモデルが、合理的に機能し得たんですね。しながら、男性も女性もライフステージも働き方も様々な人がいる中で、多様な人材が正しく活躍し、正しく成長する機会をこれまでのモデルは奪い続けてきていたと思います。そうすると男性正社員終身雇用、四六時中顔を合わせている人だけが活躍できるやり方に依存していると、先ほど申し上げた変化の世の中において、組織の事業継続や新たなビジネスモデルを生んでいくイノベーションビジネスモデル変革のようなものも起こしにくくなり、組織の成長のリスクになってきます。だから、我々は「女性活躍」に真摯に向き合う必要があるということです。

小田木:組織の中に答えがない時代ですよね。また、過去の経験にも答えがない時代ですよね。それはすごく頷けるんじゃないかなと思います。“同じである”と言うことが、成長のリスクになる時代ですよね。

沢渡:大企業も極めて同質性の高い組織から、外に答えを用いる時代になっていて、今社外副業や社内副業人材の活用に本気で取り組み出す企業も増えてきています。社外の副業人材とハイブリッドにすることによって、中にいないリソースや中に無い答えをプロジェクトとして取り入れて、組織の知識経験に変えていくようなやり方にも舵を切り始めてる時代になってきていますね。

小田木:副業解禁や働き方に関する様々なニュースも単なるトレンドではなくて、「同じである=成長のリスク」という、組織の危機感が強く現れたものだと思います。 ダイバーシティ推進、ひいてはその中での女性活躍が何のためかと改めてまとめ直してみました。

小田木:なぜ今なの?
なぜ今、女性活躍なの?
目的はなんなの? といった疑問の答えが最終的に目指す成果なのかなと思います。

最終的に目指す成果はビジネスモデル変革。多様な人材がいるだけでなく、多様な人材がそのバリューに貢献しているという状態を目指す、つまりダイバーシティを推進するということ。 そして、これまでの勝ち方とは違う方法や、バリューの出し方ができる組織に変わること、つまりインクルージョンする、ということですね。

最終的に目指す成果に向かうために、クリアしなくてはいけない問題や、最終的に目指す成果に変わろうとする組織や会社の足を引っ張ってしまう問題。例えば、気合と根性重視のカルチャーであったり、曖昧な成果や役割定義と時間起点の評価など、様々な問題が絡み合って存在していると思います。 この問題をどのようにクリアしていくのかという切り口(着眼点)が、

  • 本来業務に集中するための業務プロセス改善
    固定概念から脱却した組織変革・組織風土改革
    ———-
  • コラボで価値を生む変化に強いチームづくり
    脱個人依存、チームで成果の出せるマネジメントの浸透
    ———-
  • 働き方を制約にしないデジタルワークシフト
    アナログベースの仕事のやり方のアップデート
    ———-
  • 多様な人材が活躍できる組織風土改革
    誰もが活躍できる組織への進化による定着、採用力向上

といった「多様な人材活躍により目指す成果」となるわけです。

女性支援から女性起点へ

沢渡:あらゆる人たちが活躍できるための障害が、組織や会社の問題ですよね。 そこで重要になってくるのが「女性支援から女性起点へ」という考え方だと思います。

女性支援から女性起点へ

小田木:「女性支援から女性起点へ」というのは、多様な人材が活躍することによってより実現しやすくなるテーマとも言えるし、この多様な人材活躍により目指す成果を実現していくことで、結果としてより活躍しやすくなる組織にもなれるという考え方です。

女性活躍推進という言葉はひとつなんですが、NOKIOOは2013年から様々な企業様の女性活躍推進のお手伝いをさせていただいております。ここ3年はトーンの変化が起きていることを感じています。その変化を言葉にしたものが「女性支援から女性起点へ」となります。

女性活躍推進と言われ始めた時は、「支援」を目的とした施策が圧倒的に多数でした。 “女性活躍推進支援=助けてあげる”というイメージがありますね。

  • 女性は弱い存在だから
  • 機会に恵まれず活躍の場がない
  • 子育てや介護など、色んな制約を抱えがち

だから、働き続けてもらうためにはサポートが必要ですよねと言っているのが、女性 “支援”です。女性 “支援”は、もちろん必要な取り組みです。
ビジネスモデル変革のためにダイバーシティを推進していこうという段階に、女性 “起点”だと気づいた組織が増えているなと思います。 女性を含め働く人の事情や価値観を、その多様化したものに対応していく必要があるし、そういった多様性が職場の固定概念を破り変化をもたらす契機になるんじゃないかと言うわけです。その一つの大きなテーマが女性活躍推進です。

沢渡:女性はあくまで一つの切り口であり、女性“支援”ではなく、女性“起点”の働き方にリビルドしていくと、本質的にその組織に必要なスキル・能力・モチベーションを持ってる人が組織で活躍できるようになるわけですね。

小田木:みんなが活躍できる組織になっていく、そのために女性活躍というテーマを切り口にして、組織にある様々な問題を解決していきましょう。

女性活躍進みにくい、要因分析

小田木:女性活躍がなぜ進みにくいのか、要因分析をしています。

女性活躍が進まない要因分析

小田木:多様な人材が活躍していく、即ち、今日のテーマ 「女性活躍」を推し進めていくという中で、色んな超えなければいけない課題があります。私たちのこの要因分析マップでお伝えしたいことは、「職場にあるいろんな課題って実は要因同士が絡み合って発生していますよね」ということです。

そのため「女性活躍推進」についても、特定の誰かに課題があるとか、特定の何かが悪いといった考え方ではなく、当事者・管理職・組織、それぞれにどういった課題があって、みんな変わっていかなきゃいけないよねという中で、この絡み合っている要因を理解し、この事象の場合は特にどの課題から解決していきたいのか、どの課題に着目をすると最も取り組みの成果が上がるのかを考えていきます。

改めて「女性が活躍する」という、この言葉の定義を、NOKIOOではこのように表現しています。

時間当たりの生産性高く仕事をし、
事業や組織の中で中心的役割を果たすこと

仕事や職場に愛着をもって取り組み、
仕事を通じて成長できること

これが女性活躍の本当の定義です。 お気づきだと思いますが、主語を入れ替えてもきちんと意味が通るような定義をしており、そこに向けて何から取り組んでいくのか、どういった人材育成を形にしていくかを考えることが重要です。

沢渡:「生産性」というキーワードがありますよね。さらに「愛着(エンゲージメント)」も重要と言われますよね。成長に関連する言葉で言うと、エンプロイアビリティ=雇われ得る力もあります。女性活躍の入り口でマネージメントキーワードを立体的に繋げて、解決していきましょうという話なんですよね。ですから、女性活躍推進はダイバーシティ推進室だけの問題ではないということです。

小田木:女性活躍推進担当の方から、
「力を入れて推進したいんだけれども、推進すればする一方で、“なぜ女性だけなのか”と言う不公平感の声を受けることがある」
という切実な悩みを聞きます。

沢渡:女性起点の発想を良しとしない、女性の方も存在しますよね。生産性という観点からではなく、中心的役割になりたくないという観点でこの問題も間違いなくあります。 女性を無理やり活躍させるという発想ではなく、本当に必要なマネージメントキーワードを理解した上で、本質的な問題を解決していくやり方が必要です。「中心的役割=マネージャーになる」ことではありません。男性女性関わらず、今の時代に求められるマネージメントが果たせていけるようなやり方に再設計していくという議論も必要不可欠です。

D&I推進の本質〜「女性活躍」と「組織の成⻑」の関係性〜

沢渡:ダイバーシティ&インクルージョンの本質は、「制約条件のある人」かつ「成長意欲の高い人」に合わせて、仕事のやり方を変化させることにより、組織をアップデートさせることと捉えています。

「制約条件のある人」かつ「成長意欲の高い人」

  • 働く時間だけで評価されなければ、私はもっとこんなことが出来るのに
  • テレワークが認められれば、こんなこともできるのに

“私はこんな制約があって困っている、それは会社が悪い”
これだと、組織にとっても、その人にとっても良い状況ではありません。 大事なのは部分的に「制約条件はある」が「成長意欲が高い」のであれば、活躍機会を広げていくことがダイバーシティ&インクルージョンの本質かなと思います。

多様な人材が活躍する組織になるための打ち手

小田木:今日ご紹介するのは、三つの着眼点です。

  1. マネージメントの定義を更新する
  2. 成果をだせる人材のスキル定義を更新する
  3. 多様な人材が活躍できる仕組みをつくる

(1)マネージメントの定義を更新する

小田木:女性活躍推進において、まずそのマネージメントの定義を更新する必要があると再三お伝えしてきました。

沢渡:繰り返しになりますが、統制型(ピラミッド型)のみではうまくいかない。部分的にでもオープン型の仕事のやり方に変えていく必要があります。「制約条件のある人」が活躍できるようにするためには、前提を変えなければいけないわけですから、当然求められるマネージメントも変わってきます。

小田木:統制型(ピラミッド型)からオープン型では、劇的な変化です。よって、マネジメント要件やスタイルも当然変える必要があるということですね。

マネジメント定義 “5つのマネジメントと9つの行動”

沢渡:これからの時代に求められる“5つのマネジメントと9つの行動”という定義をしています。
縦軸が5つのマネジメントで、横軸が9つの行動です。コミュニケーションマネジメントにおいては、ビジョニングや課題発見/課題設定、意思決定などの行動が必要です。
こういった定義で、マネージメントを育成したり、チームの中で分担してマネージメントをしていくやり方に変えていきます。

小田木:この図は、管理職の仕事とは何か、その中でマネージャーの仕事とは何か、もしくはマネージメントとは何をすることかを分解してみたものです。

沢渡:基本的には、この9つの行動に軸を置いて、できているか・できていないかをアセスメントしていきます。9つの行動の中の“ビジョニング”ができていたら、5つのマネジメントにおける、コミュニケーションマネジメント、キャリアマネジメント、ブランドマネジメントができていることになります。5つのマネジメントと9つの行動を簡単に説明した5分の動画ダイジェストをアップしましたので詳しくはそちらをご覧ください。

小田木:「コミュニケーションのマネジメントが必要ですよ」と言われても、すごく抽象的でビックなキーワードです。具体的に何を実行していくことがコミュニケーションのマネージメントになるのかということを考え、9つの行動で該当するテーマについて具体的なアクションを決めたり、コミュニケーションを取ることがまさにオープン型組織に必要なコミュニケーションマネジメントというわけですね。 オープン型組織に求められる、これからのマネジメントスタイルの入り口が、(1)マネージメントの定義を更新するとなります。

“多様な人材が活躍する”にどうつなげていくのかというと、マネージメントのアップデートやマネージメント用件を再定義して更新していくための要因が何なのかを図にしています。

沢渡:

  • 困っても助け合えない
  • 働く時間の長さで評価する
  • マネジメント要件が古い
  • 対話がない

こんな組織で働きたいと思うでしょうか。これは組織における経営のイシューです。

小田木:マネージメント要件が正しくアップデートされることと、女性管理職が増えない問題がどう紐づくのかを分解してみいと思います。 女性管理職が増えない問題は、登用する側(管理職)と当事者(女性)それぞれに課題があります。“マネージメント”というキーワードの中で、登用する側(管理職)に一旦フォーカスし、どういった課題があるのか考えてみましょう。

マネジメント要件と、“女性管理職が増えない“問題

小田木:

  • 女性には無理なのでは?合わないのでは?
  • そもそも本人望んでいないのでは
  • リーダーに関しては男性の方が向いてる

など、どんな人でもバイアスは持っています。

  • 昇進したがらない女性部下何も見てきた
  • 打診をしたけれど断られた経験がある
  • そもそも女性上司と仕事をした経験がない

など、実際の経験から、そのバイアスが更に強固になっています。

このマネージメント要件のアップデートでフォーカスしているのは、知識スキルの部分。その人に知識スキルがないと言っているわけではなく「能力はあるが、部下の意向の把握の仕方を知らない」といったケースです。 部下の意向を引き出したり、自信をつけさせたりして、きちんとその能力に見合ったスキルアップをしてもらうのは、知識と技術が無いとできないことです。この経験バイアスがどこから生まれているかと言うと、今までの当たり前から培われてしまっていると思います。

沢渡:男女問わず、意識を芽生えさせるのは難しいのですが、きっかけを作っていくことは十分可能です。それはスキルの部分でも出来ますし、今までとは違う動き方や違う仕事を経験することによって、変わる人は間違いなくいます。 今までの固定化された景色から新しい景色に変えていくことが非常に大切です。

(2)成果をだせる人材のスキル定義を更新する

小田木:成果をだせる人材のスキル定義を更新する。それも統制型(ピラミッド型)から オープン 型への転換の中で、どういった更新が必要なのかを考えます。

沢渡:1秒で言うと、今までと勝ちパターンが違うということです。今までと勝ちパターンが違ってくるので、新しい勝ちパターンを再定義して足りないものは補いましょうということです。

小田木:勝ちパターンが変わるということは、勝てるための力も変わります。その勝てるための力を再定義し、そういったスキルを皆で磨いていこうということです。

これまでのスキル開発のアップデート事項(一例)

小田木:ロジカルシンキングやプレゼンテーション、業務改善など、今までの研修でもよくある人材育成プログラムのデータです。タイトルが同じでも、どんな要件でスキル開発をするかが変わっています。

例えば、プレゼンテーション。
昔も今も、統制型(ピラミッド型)だろうがオープン型だろうが、必要な能力です。プレゼンテーションに必要なスキルの要件定義が変わってきていますよということです。これまでのプレゼンテーションの主軸は、相手にどう伝えるか主軸です。オープン型で、多様な人材と繋がって、それぞれが持ってる経験値を組み合わせながら新しい価値を生み出していこうと思うと、伝え方以上に、ファシリテーションで引き出して合意形成をするというのが必要になります。 これからの組織を、オープン型の組織かつきちんとバリューを発揮できる組織に変化させるという点において、どんな人材が求められるのかを考えていきます。

多様な人材が活躍できる組織に求められる“人材像”

小田木:多様な人材が活躍できる組織に求められる“人材象”とは何か。男女同じだと思います。

A 経験に学び、自律的に成長できる人
B 一人で抱え込まず、チームの成果のために行動できる人
C アナログベースだった仕事のやり方をアップデートできる人
D 固定概念を払拭し、業務プロセスを改善できる人
E 強みを活かし、成果につなげる役割やマネジメントができる人
F マネジメント要件を理解し、チームを運営できる人

などが上げられます。
チームの成果を最大化することを前提におき、自分の時間を何に一番投じるか、仲間との関係性をどう作っていくか、それに対して自分のタスクやスケジュールをどうやって動かしていくか、これらを主体的に考えることができるスキルということです。

人や組織が変わってくれない、もちろんその課題感もすごく理解できます。その課題を感じるのであればあるほど、どんなスキルでで組織やステークホルダーに提供していくのかを洗い出し、行動に踏み出していきましょう。

沢渡:育成機会は、組織として提供し続けていく必要があります。企業によっては、入社の新入社員研修受けた後は何も育成機会がない、20年前の管理職研修を受けた後にアップデートされないといったケースはよくあります。アップデートの機会を設けていくのは、日本全体の生産性とイノベーションする・しないを大きく左右することです。

ITを使ったコミュニケーションスキルの育成も必須

沢渡:これから、時間制約がある中でパフォーマンスを上げることを求められる人は増えていきます。こういった世の中においては、とにかく IT を使ってコミュニケーションをすることが重要です。ITやテレワークを組み合わせてコミュニケーションをするスキルが、当事者もマネージャーも双方に必要です。 今までの仕事のやり方のリスクを洗い出し、ITと向き合う能力もスキルアップして欲しいなと思います。

小田木:今までの話から、自然と「女性」というテーマを忘れていったのではないでしょうか。考え方の根底には、男女に関わらず、同じでことが言えると、改めて確認できたと思います。

(3)多様な人材が活躍できる仕組みをつくる

小田木:組織の中に仕組みを作り、多様な人材が活躍できるようにしていくとは、どんなイメージでしょうか。

沢渡:コミュニケーションの仕組みも、多様な人材が活躍できる仕組みのひとつです。離れていても、コミュニケーションを取りながら業務を進める。そのためには、どういう仕組みが必要なんでしょうか。

小田木:NOKIOOのような小さな組織でも出来るというケースをご紹介します。
私たちNOKIOOは、2011年創業で11期目を迎える企業になります。20人程の小さな組織ですが、全員リモートワーク併用の働き方を創業当時から実践してきております。Web 受託開発で創業し、2016年に代表の小川による第二創業の掛け声のもと、働き方を大きく変え、そして人材育成を主軸に置いた事業を、2本目の柱にしたビジネスモデル変革をしてきました。新規事業を2本目の柱にしていくために、組織のあり方やマネジメントも大きく変えていく必要があり、組織変革に取り組んできました。

新しいワークスタイルと事業や組織の変革により、創業期の男女比8:2から、現在は3:7となっています。様々なことを変えていった結果、女性比率が自然と増え、仕事のやり方やマネジメントも大きく変わってきました。 男女関わらず活躍できる働き方の仕組みづくりが3つ目のテーマです。

組織プロセス・仕組みづくりの実例

小田木:どんな仕組みづくりをしたのかをご紹介します。

1つ目は業務基盤です。ITツールをベースにした仕事のやり方を採用し、デジタルで滑らかに繋がれる方法に変えていきました。
2つ目は、どんな方向に向かって育成するのかということ。皆が同じ武器を持っている、同じスキルを持っている、かつ同じ言語が通じ合える、考え方が同じである、目指す方向が同じである。具体的に、同じビジネススキルの習得をし使うこと、これを社員全員で取り組みました。

どんな課題に、どう手を打った?(一部抜粋)

小田木:3つ目は、業務プロセスです。沢山ありますが、第一歩として、業務進捗とそこで抱えた課題や自分なりに考えたことを1人1人が毎日社内に発信する仕組み「全員日報」をぜひ取り入れてみてください。これは、タイムリーな情報共有をできるようにすることと、適切な相互フォローを促進することを意味します。困っていたら発信する場所がある、それが全員日報なんですね。日報にレスをする、リアクションをする。もし次に話した時に、日報で上がった論点について話し合うことが、自然に多発的に生まれるようになりました。 毎日様々なことが自分の目の前を通り過ぎます。その時々で、様々なことを考えたり、反省したり、振り返ったり、今度こうしようと思うことも、日々の忙しさに埋もれて消えてしまいがちです。全員日報という仕組みで言語化・発信して、自分の中でも振り返るし、仲間とも共有するという仕組みを作ることで、これを育成に活用しようということです。

沢渡:単に助け合うだけではなく、日報から誰かが論点を拾って、1on1で話をする機会が生まれる。その後、全員巻き込んでみようかというところから、オンラインミーティングが生まれて、そこからこう新しい事業が生まれたり、セールスアプローチが生まれたりすることが日常茶飯時ですよね。

小田木:自然発生的に、本質的な会話だとかコミュニケーションが生まれるようになった仕組みの原型が、この全員日報です。 もう一つ重要な項目は、「期待役割」を設定することです。女性活躍、特に時短勤務をしている人材に、きちんとバリューを発揮してもらう、機会を与えて成長してもらう中で、欠かせない項目が「期待役割」という仕組みになります。

  • 人材を活かしきれない
  • せっかく採用してもミスマッチを生じさせてしまう

こういった課題とは常に隣り合わせですし、組織の認識と本人の認識のずれが発生することも有りえます。組織の望む、こういうこと任せたい、こういう期待をしているという点と、当事者の望む、こういうことでバリューを発揮したい、これが得意という点です。

ここにギャップがある状態だと、当然ながらコミットメントが引き出せず、受け身的な仕事姿勢も散見されました。これは、曖昧な役割と合意形成によって、発生していた問題です。こういった課題を解消すべく「期待役割」という仕組みを導入しました。 「期待役割」とは、メンバー1人1人に対し、チームの成果に対して、担ってほしい役割と目標として期待している行動を文書化したものです。目標シートではなく、ジョブディスクリプションのようなイメージを持ってください。あなたはこういう役割ルを担ってほしい、チームの成果に対してこの部分で貢献して欲しい、こういう行動を期待している、という点を文章にし、本人の合意形成するというステップです。更に、社内でこの期待役割を全てオープンに共有し合うことで、誰がどんな役割と期待を担っているかがわかるようになっており、助け合いだとか、誰に相談したら一番いいだろうかとか、この役割は誰が担っているからこの人とコラボレーションをしようといった、コミュニケーションのための仕組みとして有用です。

ここでご紹介した仕組みも含めて現在は47の仕組みづくりをしています。
結果何が起きているかと言うと「働き方や時間の長さにかかわらず組織に貢献できる」という個々の意識が芽生えてきたということです。
期待役割によって、評価される点が時間の長さではなく、役割として明確になります。役割が明確ということは、評価も適正にできるわけです。そして、働き方時間の長さにかかわらず日々の業務で成長できるようになったわけです。 全員日報の仕組みで、振り返り→言語化する→組織に発信する→仲間からフィードバックをもらう→業務に生かすというサイクルが、日々の業務レベルで回るようになった。バイトだろうが社員だろうが、多様な働き方をする人材が働く限りは、そこで成長でき、チームの成果に貢献できるという組織にしていくことが重要です。

まとめ

小田木:NOKIOOが様々なことに取り組んだ結果として、多様な人材が活躍できる組織となったときに、何がポイントだったのかをご紹介します。

多様な人材が活躍する組織づくりのポイント

小田木:情報共有、業務プロセス、空気・文化醸成という3つに分けてポイントを押さえます。例えば、情報共有という観点でいくと、

  • 誰が何をやっているか
  • 誰がどんな役割期待で何が得意か分かる
  • チームや組織がどこに向かってるか分かる

とういうポイントです。 業務プロセスと文化醸成に関しても、このようなポイントを押さえていきます。

取り組みは先ほどの通りですが、情報共有、業務プロセス、空気・文化醸成という3つのポイントは、生産性や収益性という観点で、とても効果を発揮します。
NOKIOOは地方都市に拠点を置く小さい会社です。そもそも採用が困難な地域において、8年間の採用者数が、取り組み以前と比べて、4倍以上になっています。合わせて、2本目の柱である新規事業(人材育成事業)が、育ちつつあります。この人材育成事業の売上高比率が、全体の4割まで育ってきました。 女性起点の働き方に再設計し、スキルアップし、仕組みを変えてきたことにより、ビジネスモデルが新しく変わってきました。組織の本来の興味関心に効果をもたらすことが、女性起点の仕組みに変えることの、大きな意義です。

女性活躍推進は、女性だけのためのものではありません。 それによってビジネスモデル変革に寄与するように、様々なマネジメントキーワードを紡ぎ合わせて、どこから突破していくか、そんな戦略を描くための手段としてほしいと思います。

沢渡あまね

<講師> 沢渡 あまね
あまねキャリア株式会社 代表取締役CEO/なないろのはな 取締役/株式会社NOKIOO 顧問

日産自動車、NTTデータ(オフィスソリューション統括部)、大手製薬会社などを経て、2014年秋より現業。情報システム部門、ネットワークソリューション事業部門、広報部門などを経験。現在は企業の業務プロセスやインターナルコミュニケーション改善の講演・アドバイザー・執筆活動などを行っている。NTTデータでは、ITサービスマネージャーとして社内外のサービスデスクやヘルプデスクの立ち上げ・運用・改善やビジネスプロセスアウトソーシングも手がける。これまで300を超える企業・自治体・官公庁で、働き方改革、マネジメント変革、組織改革の支援および経営層・管理職・中堅人材の育成も行う。これまで指導した受講生は4,000名以上。 著書「バリューサイクル・マネジメント」「職場の問題地図」「マネージャーの問題地図」「職場の科学」ほか多数。


株式会社NOKIOO 取締役 小田木朝子

<講師> 小田木 朝子
株式会社NOKIOO 取締役/経営学修士

ウェブマーケティングの法人営業などを経て、NOKIOO創業メンバーとして参画。教育研修事業担当役員。2011年、中小企業診断士資格取得。2013年、自身の経験を活かし女性の社会参画支援事業『ON-MOプロジェクト』を立ち上げ、会員6,000名を超えるネットワークを育成。2016年12月『一般社団法人 育勉普及協会』を設立。2020年、オンライン教育サービス『育休スクラ』を立ち上げ、経験学習による人材開発・オンラインを活用したキャリア開発とアクティブラーニングを法人・個人向けに提供。グロービス経営大学院修了。
著書「人生の武器を手に入れよう!働く私たちの育休戦略」。
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研修に関するお問い合わせ

株式会社NOKIOO法人研修サービスWebサイトにて、資料ダウンロードやお問い合わせがいただけます。



参考書籍について

バリューサイクル・マネジメント ~新しい時代へアップデートし続ける仕組みの作り方

バリューサイクル・マネジメント ~新しい時代へアップデートし続ける仕組みの作り方

私たちの働き方は本当によくなったのか?
DX、SDGs、イノベ―ション、ダイバーシティ、女性活躍推進、エンゲージメント、エンプロイアビリティ……個々のキーワードや施策が自己目的化、「仕事ごっこ」化していないか?新しい時代へアップデートしていくために本当になすべきことを、累計25万部・問題地図シリーズの生みの親が集大成。一企業だけ、一部門だけ、一個人だけの努力では成し遂げられない価値創造へ踏み出すための、変革の教科書。

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