【対談】育休をスキルアップの機会に。個人と組織をアップデートする育休戦略 | 後編

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育休は企業にとって人材育成のチャンス!サイレントマジョリティー層にリスキリングの機会提供を

小田木:前回、育休復帰後に必要になるスキルと、その身に付け方について荒木さんにお聞きしました。自分の仕事とキャリアを見つめ直すには、同じ課題意識を持った組織外の人たちと学び合える場が理想的だと教わりました。そう考えると、育休中をどう過ごすのかに工夫の余地がありそうですね。育休明けに働き続けることが当たり前になりつつある今、育休中に少しでも復職後のキャリアを考えたり、スキルを学び直ししたりすることが、復職後の可能性を広げる選択肢になるかもしれません。また、こうしたニーズを持つ社員へ育休中にさまざまな選択肢を提供できるようになると、企業側にもチャンスとなるのではないでしょうか。育休中のリスキリング(新たなスキルや知識の習得)が、その後の人材のパフォーマンス、ひいては組織の活性化にもつながるからですしかしながら、出産にともなうキャリアや仕事のやり方というと、個々人の問題という捉え方が根強いように思います。

荒木:もちろん、育休は文字通り休職にあたるので、その期間をどう過ごすかは基本的には個人の選択、ケースバイケースでしょう。ご本人がお子さんとどんな時間を過ごしたいかにもよりますし、体力的にかなりタフな期間となる方もいらっしゃると思いますので。ただ、何らかの機会があれば一歩を踏み出したい人たちのために、企業側から選択肢を提示することは、もっと考えても良い気がします。

小田木:オンラインスクール「育休スクラ」の広報活動をする中で、私が感じている手ごたえがいくつかあります。その1つが、外で学べる機会を求めている人が一定層いるということです。育休を経て、これからも同じように仕事ができるか不安を抱えている方が多いのです。

育休スクラの受講を通じて復職後に必要となるスキルを得、より働きがいのある復職を叶える(育休スクラ「参加者の声」より)

荒木:なるほど。育休を取得する人たちを分類すると、きっと3層くらいに分かれるのでしょうね。1つ目はアクティブ層。育休という期間を与えられ、それ幸いと今までできなかったことを小さく始めてみる人たちです。企業から与えられる枠組みがなくても、自発的に行動する人たちがいらっしゃいますよね。一方、育児では体力を使うので家のこと以外をする余裕のまったくない人たちもいます。これは完全に育児だけにコミットするという層です。そして、アクティブ層と育児コミットお休みモード層の間に隠れるようにして、「声を上げない大多数の人たちの層(=サイレントマジョリティー層)」がある気がします。何か機会があれば行動してみたいけれど、とくに機会を提示されていないから動いていない人たちです。育児は育児で大変ですし、自分から動くタイプでもない、という人たちって意外と多いと思いませんか?

小田木:たしかに、そのような潜在層は実際に多いと思います。

荒木:企業が着目するとしたら、このサイレントマジョリティー層だと思います。アクティブ層の人たちと育児コミットの人たちは、企業がその存在に気づきやすく、必要な選択肢やケアが行き届きやすいと思います。アクティブな人たちは、もう自分から積極的に動けますよね。育児コミット層の人たちは、それ以外の行動できない理由が明確ですから、行動オプションは求めていないでしょう。

小田木:そうですね。サイレントマジョリティー層にいる人たちは、枠組みがあればチャレンジできる人たちかもしれません。むしろ、機会があれば動けるのに、それがなかったから動けなかったというのはもったいありませんね。そうした人たちに育休中の選択肢を提示することが、個人のチャンスにもなり、企業から見ても豊かな経験をした人材を組織の中に増やしていくチャンスにもなります。

荒木:出産や育児だけでなく、たとえば介護やご本人の病気など、こうしたライフイベントというのは誰にでも起きる可能性があります。育児を経験するだけでも人として豊かな経験になります。さらに、来たるべき「短時間でパフォーマンスをあげる働き方に備えて越境学習しておくと、復帰後により貴重な人材となっていけるでしょう。

小田木:まさに私たちNOKIOOでは、「育休戦略」というキーワードを使っています。育休という時間をうまく使えると、出産後も仕事を楽しみながら自分らしいキャリアを歩む可能性が広がると思うのです。個人がこれまでのキャリアを見つめ直したり、必要なスキルを学んだりすることで、会社から「あなたと働きたい」と言われる人材に成長できるからです。ただそれは、1人でがんばるのではなく、スクールのような枠組みを使ったり同じ課題意識を持つ人たちとともに学んだりすることで、より効果が高まると思っています。この機会に組織の外に出て自分を見つめ、多様な経験を積めるようサイレントマジョリティーの人たちの背中を押せると、企業にとってもチャンスとなるのではないでしょうか。時間をかけるのではなく、もっと効率的な仕事のやり方をリスキリングする機会になります。よく、「組織の外に出ることで、転職したくなってしまうのではないか」という心配をされる企業の声も聴きますが、逆です。そうした選択肢を提供してくれる会社への愛着が高まりますし、外を知るからこそ自分になかった問題解決の着眼点を知り、「まだやれる」と見方が変わるのだと思います。育休中は学習の”強制”はできませんが、だからこそ選択肢があること、自分で選べることが大事です。「しっかり休んでもいいし、外で学ぶこともできますよ」と育休中の選択肢が増えること、そして与えられた選択肢を誰もが主体的に選べるような社会になっていくといいなと思います。

おわりに

育休明けは、仕事にかけられる時間が大きく制約されますが、見方を変えると個人の成長のきっかけとなります。この「復職後の圧倒的な時間不足」を乗り越えるためには、仮説を立てて効率的に仕事をこなすスキルと他人を頼るスキルが必要です。その2つを身に着けるためには、組織の外で学べる場所を持つことが重要となります。

その中で、企業側もさまざまなリスキリングの機会を提供できるとよいかもしれません。きっかけがあれば学びの場に飛び込んでみたい人たちは意外と多く、同じ課題意識を持つ仲間同士での学びは、これからの組織に欠かせない人材を育てるのに有効に働きます。

社員が個別に休む時間という育休の捉え方から、企業側のサポートを通じてリスキリングする期間という捉え方に変わるタイミングが来ているかもしれません。

育休者向けオンラインスクール「育休スクラ」とは

育休スクラは、組織で働く女性が、仕事のある人生を楽しむスキルを身につけるためのオンライン・スクールです。
特長は、女性にとっても、組織にとっても有益なスキルであること。
独りよがりにならず、組織の中で仲間と協調しながら活躍するために必要なビジネススキルが、育休中という短期間で身につきます。
育休スクラが参加者に対して提供するのは、実感できる“変化体験”です。
継続的・体系的な学びの仕組みと、刺激あるコミュニティが、ひとりひとりの変化を確実なものにします。

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