女性活躍推進2.0は組織改革の起爆剤である~「全員活躍」を実現して組織をアップデートする方法~【前編】

トピック&テーマ

2022年2月、NOKIOOは「90分腹落ちセミナー 組織が本気で取り組みたくなる女性活躍2.0」を開催いたしました。東京証券取引所が2021年6月にコーポレートガバナンス・コードを改訂し、中核人材の多様性確保を打ち出しました。ESG投資にも注目が集まっている中、女性活躍推進は重要度が今まで以上に高まっています。 
目標数値を追いかけるだけの女性活躍推進ではなく、企業価値の向上に繋げていくためにはどのように取り組めばよいのか。300を越える組織の組織改革・人材育成に携わってきた沢渡あまね氏と、女性活躍推進の本質に迫ります。 

目次:

  1. 女性活躍推進とは、抜本的な組織開発である 
     組織開発は「Being」と「Doing」の積み重ね 
     女性活躍だけではなく、目指すべきはその先の「全員活躍」 
  2. 女性活躍推進2.0は、1.0と何が違うか?
     「女性活躍2.0」をどのように定義するのか? 
     女性支援から女性起点の「女性活躍」を推進しよう 
  3. 「女性活躍2.0」時代のあるべきマネジメントとは 
     個人の課題ではなく、組織の課題として認識する 
     「成長意欲の高い人」に照準を合わせ、組織を正しくアップデートする 

小田木 朝子(以下、小田木): 
本日のテーマは「組織が本気で取り組みたくなる女性活躍2.0」です。沢渡さんと一緒に、女性を含めた多様な人材が最高のパフォーマンスを発揮できる組織をどう作っていくか?
ということについて議論していきます。
本セミナーでは、2つのテーマに分けて、話を進めていきたいと思います。 

●「女性活躍2.0」とは何か? これまでの「女性活躍」との違いは? 
●「女性活躍2.0」を実践するためのヒント 


本記事では、前半の「女性活躍2.0」の定義についてご紹介します。 

1.女性活躍推進とは、抜本的な組織開発である 

組織開発は「Being」と「Doing」の積み重ね 】

小田木: 
女性活躍推進、これは広く捉えると組織開発・組織作りの一環です。「女性活躍推進」という言葉を知っていても、その取り組みによりどんな会社の姿を目指したいかを描いているかどうかが、実現する上での大きなポイントとなります。 

まず1つ目のステップは、望ましい状態の定義がどれぐらい解像度高くできているか。そして2つ目のステップが、その望ましい状態を実現するための具体的な行動として、どんな打ち手が考えられるのか。この2つが両方あって成立します。 

沢渡 あまね(以下、沢渡): 
組織開発とは、「Being+Doing」の積み重ねで、Being・Doing・Being・Doing・Being……のチェーンリアクション、連鎖です。 

女性が活躍できている理想の状態を作るためには、「女性活躍推進だ」と言っているだけでは前に進みません。その状態を作るためにどんな行動を増やせばいいか、というDoingを具体的に考え、実践していかなければいけません。 

女性活躍だけではなく、目指すべきはその先の「全員活躍」

沢渡: 
女性活躍はあくまでも組織づくりを担う一つの取り組みですので、女性活躍のBeing、Doingの議論を進める中で、組織全体のBeing、Doingと照らし合わせながら景色を合わせていくことも重要です。  

例えば、最近よく組織開発の領域で「心理的安全性の高い状態を作る」と、多くの組織が言っています。心理的安全性が高い状態がBeingですが、では何のために心理的安全性の高い状態を作るのか?こういった議論ができればいいですよね。 

小田木: 
まずは望ましい状態のBeingを定義して、「女性活躍している組織」の解像度を上げていきたいと思います。解像度がクリアになると、現状とのギャップもクリアになりますので。 
このギャップを埋めるためには、「どんな手を打つか」というDoingをクリティカルに優先順位をつけて描けると、それ自体が取り組みになりますよね。 

沢渡: 
まさにそうだと思います。すでに女性活躍という言葉に違和感を持たれている方も多いと思います。女性だけが活躍すればいい社会でなく、その先にある「全員活躍」が望ましい状態です。 

2.女性活躍推進2.0は、1.0と何が違うか? 

「女性活躍2.0」をどのように定義するのか? 】

沢渡: 
そもそも、女性活躍というワードに抵抗感がある方々も増えてきているのではないでしょうか。 

小田木: 
女性活躍というキーワードが大きすぎるため、個人の見方や価値観によってバラつきが生まれてしまいます。 

女性活躍2.0の定義をすると、2つの柱で説明できます。 

●女性を含む多様な人材が組織の中で最高のパフォーマンスを発揮している状態
●女性を含む多様な人材から最高のパフォーマンスを引き出せる組織づくりと、環境づくり 

このように「最高のパフォーマンスを発揮できているか」という物差しがあるかどうかで、描かれるBeingも、打ち手として設計されるDoingも、まったく違うものになってくると思います。 
また、「女性も含む多様な人材から最高のパフォーマンスを引き出せる組織になっていますか?」という問いかけが、2本目(右側)の柱です。 

女性支援から女性起点の「女性活躍」を推進しよう 】

沢渡: 
振り返ると、女性活躍1.0の状態は、悪気なく男性に優位な社会構造であり、組織構造であったと捉えることができると思います。悪気なくというのは、社会環境がそうだったからです。ですが、世の中が変わったのでアップデートしていく必要があります。 

小田木: 
女性活躍だから女性に何かしてもらうとか、女性をどうするという話ではなく、女性活躍をキーワードにしながら複合的な組織の問題を解決して、よりよくしていく方向性にできたらいいですよね。 

女性活躍2.0を1.0と対比してみましょう。私たちは1.0を女性支援、2.0を女性起点と定義しています。 

女性活躍1.0は支援型です。 
例えば、女性は出産や介護があると仕事の機会に恵まれず、家庭の状況によっては仕事を続けることが困難な人もいる。そんな女性に働き続けてもらうために、いろいろと支援していくことが必要だ、というのが女性支援型の女性活躍1.0です。 

こういった支援も必要だったので否定はしないですし、支援なくしては成立しないこともあります。制度が整うことによって、例えば育休取得をして、その後復帰して仕事が継続できるようになり離職率が下がる。しかし、現状はこれだけでは行き詰っている組織も増えているのではないでしょうか。 

女性活躍2.0は、「女性起点」です。 
先ほど沢渡さんのお話にあった男性中心の硬直化した組織を変えていく必要があります。そのためには、多様な人材が多様なリーダーとして活躍していくことが急務です。硬直化している組織ですので、固定概念を破ることが必要です。その手段としてダイバーシティ推進があり、その1つに女性活躍推進があります。女性活躍推進を通じて、多様な人材がいて多様な働き方ができる変化に強い組織へ生まれ変わることが期待できます。 

3.「女性活躍2.0」時代のあるべきマネジメントとは 

個人の課題ではなく、組織の課題として認識する 】

小田木: 
女性活躍は1.0から2.0へ移行しています。では、女性活躍2.0のBeingの実現を阻む課題は何か、ということを図に表してみました。最高のパフォーマンスを出せないことに対してどんな課題があるのか? という点について、登場人物別に分けて整理しています。 

沢渡: 
2番の「キャリアの希望を言わない(言えない)」に着目したいと思います。この問題は根深く、本人の問題だけにされがちですが、マネジメントや組織としてのコミュニケーションデザインの問題であることが往々にあります。 

では、どうすればいいのか。やはり、対話の積み重ねが大事になってきます。例えば、育休明け間もなくは、周りの人たちが「育児が大変だろうから、大きな仕事は任せない」と気遣って簡単な仕事しか任せないとします。しかし、1年も2年も同じラベルでその人を見てしまって、悪気なく活躍機会を奪ってしまうことがあります。1年後・2年後でライフステージも変われば、やりたいこと・できることも変わってきます。マネジメント側が決めつけるのではなく、1on1などを通じたお互いの期待役割やキャリアについての対話を通じて、今の状態にあった働き方ができるようにする必要があります。 

小田木: 
そうですよね。何が課題であるかを認識するためにも、対話は日常的に取り入れる必要がありますよね。 

図を俯瞰してみると、図の左側は女性活躍1.0的な考え方で、個人の問題として着目しています。一方、右側は女性活躍2.0の視点で組織全体の問題として着目しています。 

沢渡: 
女性活躍1.0は、本人の気合と根性と意識に任せてしまっていますよね。 

小田木: 
まさにそうで、かなり個人へ依存しているアプローチです。 
女性活躍2.0のアプローチは、組織として仕事のやり方やコミュニケーション方法、仕事の役割など全般的にアップデートしていくことで、女性活躍1.0視点の課題も解決できるというものです。 

「成長意欲の高い人」に照準を合わせ、組織を正しくアップデートする

小田木: 
例えば「男性社員と比べて女性社員は管理職になりたがらない人が多い」という問題意識があったとき、1.0的アプローチと2.0的アプローチはどう違うか。 

●1.0的アプローチ「女性の意識を変えなければならない」
●2.0的アプローチ「組織全体のマネジメントスタイルを変えていく必要がある」 

もはや、女性活躍だけの問題ではありませんよね。 
「女性活躍」というキーワードをフックにして、組織全体に必要な仕事のやり方や考え方・スキルのアップデートを推進していきましょう。 

沢渡: 
これまでは社会環境や仕事のやり方、マネジメントの仕方、組織カルチャーによって多様な働き方は受け入れることができませんでした。今後は、何かしらの制約条件がある人や成長意欲の高い人に合わせて、組織をアップデートしていくことが必要になってきます。 

「成長意欲が高い人」に合わせることがポイントです。「困ります」と不平不満を言う人に基準を合わせると甘やかしの構造になるからです。 

成長意欲やポテンシャル、貢献意欲が高い人たちに合わせて制約条件を取り除けると、女性のみならず全員が正しく活躍でき、組織も正しくアップデートしていくことができるでしょう。 

<講師> 沢渡 あまね
あまねキャリア株式会社 代表取締役CEO/なないろのはな 取締役/株式会社NOKIOO 顧問

日産自動車、NTTデータ(オフィスソリューション統括部)、大手製薬会社などを経て、2014年秋より現業。情報システム部門、ネットワークソリューション事業部門、広報部門などを経験。現在は企業の業務プロセスやインターナルコミュニケーション改善の講演・アドバイザー・執筆活動などを行っている。NTTデータでは、ITサービスマネージャーとして社内外のサービスデスクやヘルプデスクの立ち上げ・運用・改善やビジネスプロセスアウトソーシングも手がける。これまで300を超える企業・自治体・官公庁で、働き方改革、マネジメント変革、組織改革の支援および経営層・管理職・中堅人材の育成も行う。これまで指導した受講生は4,000名以上。 著書「新時代を生き抜く越境思考」「バリューサイクル・マネジメント」「職場の問題地図」「マネージャーの問題地図」「職場の科学」ほか多数。


<講師> 小田木 朝子
株式会社NOKIOO 取締役/経営学修士

ウェブマーケティングの法人営業などを経て、NOKIOO創業メンバーとして参画。教育研修事業担当役員。2011年、中小企業診断士資格取得。2013年、自身の経験を活かし女性の社会参画支援事業『ON-MOプロジェクト』を立ち上げ、会員6,000名を超えるネットワークを育成。2016年12月『一般社団法人 育勉普及協会』を設立。2020年、オンライン教育サービス『育休スクラ』を立ち上げ、経験学習による人材開発・オンラインを活用したキャリア開発とアクティブラーニングを法人・個人向けに提供。グロービス経営大学院修了。
著書「人生の武器を手に入れよう!働く私たちの育休戦略」「仕事は自分ひとりでやらない」。
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●アクティブ・ブック・ダイアローグ®認定ファシリテーター

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