復職後の人材とともに最高の成果を出せる組織に変える『育休マネジメント』~育休を制する組織は両立期人材の戦力化を制する~

トピック&テーマ

2021年5月20日、NOKIOOはオンラインにて「90分腹落ちセミナー 復職後の人材とともに最高の成果を出せる組織に変える『育休マネジメント』~育休を制する組織は両立期人材の戦力化を制する~」を開催しました。
男性育休が注目を集める中、育休復職後の人材の能力やモチベーションを引き出し戦力化するための、復職者と正しく向き合うマネジメント『育休マネジメント』にフォーカスし、復職後の両立期人材とともに組織が成長するためのマネジメントにアップデートするための要件をご紹介いたします。

目次

  1. なぜ今「育休マネジメント」なのか
  2. 「女性活躍により目指す世界観の定義」をするには
  3. 育休者と企業のギャップ
  4. まとめ
  5. 研修に関するお問い合わせ
  6. 参考書籍について


なぜ今「育休マネジメント」なのか

小田木朝子(以下、小田木):本日のテーマは「育休マネージメント〜育休を制する組織は両立期人材の戦力化を制する〜」これを一緒に紐解いていきたいと思います。 まずは「なぜ、育休マネージメント?」という点で目線を合わせをしたいと思います。

「なぜ、育休マネージメント」なのかという点を、私たち自身の課題感はもちろん、なぜ組織がこのテーマに向き合う必要があるのか、これに向き合うことでどんないいことが起こるのかといった目線合わせをさせていただきたいと思います。本日ご参加の皆様は、おそらく既に様々な両立支援の手は打っていらっしゃるんじゃないかなと思います。この様々な打ち手を組織の中で取り組んでいることだとか、そこにある風土・空気・文化が本当に成果につながっているのか。これを一緒に考えましょうというのが、本日の入り口になっております。

成果を考えようというと、必ず出てきますよね。「そもそも成果をどう定義しますか」ここから入っていきましょう。ちなみに言葉の定義ですけれども、本日タイトルにもつけさせていただいたこの「育休マネージメント」について、どんな意味合いを込めたかお伝えします。

沢渡あまね(以下、沢渡):一つ目です。育休復職後の人材の能力を最大限に引き出し、戦力化すること。もう一つが、育休復職後の人材から最高の成果・ポテンシャルを含む成果を引き出せる組織に変わること。
そのための「戦略的介入仕組みを作っていく、あるいは育成に投資する景色を書いていく、戦略的介入=育休マネージメント」このように定義しています。

小田木:ここで「戦力化」というキーワードも出てきましたけれども、誤解の無いように補足しておくと、“とにかく組織のために頑張れ”ということだけが戦力化ではないなと思います。誰にとっても良く、かつそれが組織にとってもきちんとバリューを生み出す形で、チームの中及び組織の中で機能している状態を「戦力化」という表現を今日はさせていただいてます。

では何故「育休」なのか。ここについても景色合わせをしておきたいなと思います「育休」というこのキーワードを出した瞬間に、女性に特化した特別なケースと受け取られることがあります。まさに男性育休取得や、実際に自分も取りましたというコメントもありましたけれども、女性に特化した特別な話にしたいわけではなく、ライフイベントを迎えた社員が一度仕事を離れる、そしてまたその後に組織に戻って来る。こういったプロセスを起点にして、多様性がきちんと成果につながるマネージメントを考えて行こう、そのための一つの大きなキーワードであり好機が「育休」というステージじゃないかなと考えております。

“育休復職者は特別な事情を抱えた人”ではなくて、組織の中の誰もが事情を抱える中で、多様な事情を抱えがちで、多様な働き方を選択して、メジャーとマイノリティ、どちらかと言えばマイノリティな方々。一方で、固定概念やバイアスの影響を、今まだ非常に受ける可能性が高く、一方で組織に先んじて変化を経験している。こういう人たちが「育休というライフイベントを迎えたり、そういう選択をした方」だと言えませんか?ここから考えていきましょう。変化を経験しているというところが、実は大きなキーワードかなと思います。組織が経験する変化について、沢渡さんに今日の話のバックボーンを語っていただきたいなと思います。

組織で進める女性活躍
出典:『バリューサイクル・マネジメント』(技術評論社)


沢渡:書籍「バリューサイクル・マネジメント」でも軸で説明しているので、各論はよろしければじっくり読んでいただきたいです。まさに今その絵で言うと、左の統制型(ピラミッド型)に最適化されたやり方だけでは勝てなくなっている、すなわち右のオープン型で、個人個人が、あるいは部署同士が、あるいは会社を超えた企業同士、企業とフリーランス・副業人材などなどが、オープンに繋がって問題解決をしていく。あるいは、新しきを産む。すなわちイノベーションをやれるような仕方に部分的にでも最適化していかないと、うまくいかない時代になってきているという風なことが言えると思います。
どちらも正しいんです。統制型(ピラミッド型)が製造業に見られるような、基本的なプロセスが決まっていて、逸脱しないことを良しとする。それによって、大量生産・大量消費型のビジネスを回していくというモデルもあり、その時代においては正しかったですね。
しかしながら、このやり方一辺倒ではもう上手くいかなくなっているという時代だと思うんですね。一言で言うと、その中に答えを見出せない時代で、統制型(ピラミッド型)のモデルというのは、基本的に固定的な人が固定的な景色の中で長年従事する。それによって、パフォーマンスを発揮していくというやり方です。
言葉を変えれば「男性正社員、24時間戦います」型の人が活躍できて、それによりパフォーマンスが発揮できていた、成果が出せたやり方だと思うんですね。しかしながら、今不確実性が高まっています。コビット・ナインティーンのような未知のリスクがあったり、あるいはイノベーションが進んでいくと、その組織の中の過去に答えを見出せない。今までにいない人が知識能力を発揮することによって、繋がることによって問題解決、あるいは新しいものを生み出して行ったりできる。

さらには、ライフステージも長くなりますね。当然、60歳を超えてまで勤めるとなる。そうなると、この少子高齢化の時代の中は、男性も女性もライフステージが長くなっていく。長いライフステージと向き合って活躍していく。あるいは個々が繋がって、パフォーマンスを発揮していく。そのためには、今までの縛りを正しく解放していかないいけない。女性活躍はあくまでも入り口で、シニア人材をどう生かしていくか、あるいは副業のような方と向き合いながら、部分的に力を借りてパフォーマンスを発揮していく。こういった仕事のやり方に変わり得ないと言う、そんなものを絵で示しました。部分的にでも右に変わっていく、あるいはこの慣れた制約条件を解放していくために、今日は「女性」という視点で物事を考えてみませんか?そういう話をしていきたいと思います。

小田木:ありがとうございます。やっぱりこの沢渡さんの統制型(ピラミッド型)からオープン型にそのシフトしていく必要性に組織が直面しているという中で、過去に答えがなくて組織の中に答えがない時代に突入している。だから、一部分でもオープン型にシフトしていきながら、答えや問題が何かを考えて、答えがないものを編み出していけるような働き方や価値の生み出し方ができる組織になるんだよ。というメッセージがやっぱりすごくストンと落ちますよね。

沢渡:こと女性活躍、これは日本の過去の統制型(ピラミッド型)で、男性正社員が主体の働き方の中で、実は女性が能力を持っている。あるいは答えを持っていたんだけれども、今までの統制型の柵の中で封じ込められてしまっていたという事実もあるのですね。これを正しく解放していくと、実は答えを見出し得る、ヒントを見出し得る、突破口を見出し得る、という話だと思うんですね。ですから、過去に答えがないというのは今のメンバー、今の組織の中に答えがないと考えるのではなく「封じ込められ鍵がかけられた宝箱が、実はあり得るよね」こういう目で見て欲しいと思っています。
あくまでも、統制型(ピラミッド型)とオープン型が二項対立ではいということが重要です。統制型(ピラミッド型)で良い部分もあると思います。状況に応じて使い分けることが大事なんですね。

小田木:これが、今日の90分腹落ちセミナーの背景にある考え方その1です。だから女性活躍であり育休マネージメントだということですね。

成果を出せる組織になるとありましたが、何をもって「成果というのか」について、景色合わせをしておきたいなと思います。


「女性活躍により目指す世界観の定義」をするには

小田木:「女性活躍により目指す世界観はどう定義するのか」というところを一枚に落とし込んだ図です。最終的に女性活躍も含めた、組織としての戦略的介入によって目指したいのは一番右側ですよね。

沢渡:バリューサイクル・マネージメントでも強調したんですが、組織が最終的に目指した成果というのは、ビジネスモデル変革だったり、ビジネスモデル変革を後押しするためのD&Iだったり、それによって多様で成長する意欲のある人やチャレンジする人が正しく活躍していけることです。もちろん、ライフステージの中で何かあった時には組織と互いに助け合っていける。それによって、組織に対するエンゲージメント(心理的安全性)を高めて、パフォーマンスを発揮していく。ビジネスモデルを変えて、あるいは新しいものを生んでいく中で組織に、良い人、良いお客様、良い投資家、良い未来の従業員やお取引先が集まる。すなわちファンをつくる力=ブランディング力を高めていく、ここが経営者の関心事だと思うんですね。最終的に目指す成果に到達するために、女性活躍により目指す中間の成果がある。女性活躍によってもたらされる変化として、業務プロセスが改善されたり、デジタルワークシフトが進んで行ったり、コミュニケーションのやり方がアップデートされて行ったり。コビット・ナインティーンのような、変化にも強い仕事のやり方マネージメントの仕方に成長していく。それがこの中間の部分だと考えます。

小田木:ということは、最終的に目指す成果に向かうために、多様な人材がきちんと活躍できることを阻んでいる課題があって、これを解決していこう。これがスタートになるんですね。

育休者と企業のギャップ

組織の成果につながる“育休マネジメント”とは?

小田木: 「育休マネージメント」が今日のテーマとゴールです。テーマは「復職後の人材と共に、最高の成果を出せる組織に変わる育休マネージメントについて考えよう」となります。内容は、育休者の現状と企業が気づいていない非常に多いギャップを洗い出して、ここを紐解きながら、多様な人材が活躍できない要因は結局何なのか、どのようにアプローチをしていくことができるのかを議論したいと思います。 そしてゴールは、育休マネジメントの全体像を理解し合い、そして実践に必要な着眼点をみんなで持ち帰ることがゴールになります。

共有させていただくテーマは、決して女性や育休者の片方の立場からもっとこうすべきだという話をしたいわけではありません。企業側の観点から、意識と当事者側が見えてる両方の景色に公平にアプローチをし、どうしていくかということを考えたいというものになります。

育休所得者と企業とのギャップここから考えていきます。現場を這いずりまわっているとよく目にするギャップを全部で6全部で6つあるのですが、今日はその中から3つ深堀りをさせていただきます。

(1)時間で評価するマネージメントの限界/無意識バイアスが成果も成長も奪う

無意識バイアスが成果も成⻑も奪う

小田木:左側が、当事者側が感じる・抱える問題意識や課題感で、右側が組織の問題意識や課題とマネージャーの問題意識や課題と、バイアス(固定概念)みたいなものも含めて、ここに書いてあります。影響し合うものを線でつなぎながら、最終的には全て左下に問題が顕在化した状態が書いてあります。

「キャリアの希望と現実のギャップに悩み、当事者がモチベーションを低下させてしまう」最終的にここに行き着くまでには、どんな状況要因やバイアス(固定概念)が絡み合ってここに至るのかが図から読み解けるようになっています。 「キャリアの希望と現実のギャップに悩み、当事者がモチベーションを低下させてしまう」こに行き着くまでに、どんな道を減るのか想像がつきますか?まず、当事者本人のバイアスとして、「育児期は、キャリアを諦めるしかないと思い込む」ことがあります。なぜそうなるのか、これを辿って行きます。「希望を言わないし、言えないといった状況があるから」そして「育児とキャリアを両立するイメージが持てないから」今度は組織とまたがって「チームで成果を上げるという観点が欠如していたり、チームで成果を上げるための評価がされていない」そして「一人で抱え込む」など、色々な要因が絡み合っているんですね。沢渡さんはこの中でどんな部分に着目しますか?

沢渡:「育児はキャリアを諦めるしかないと思い込む」これは当事者もそうですが、マネージャーも「育児時期だから、時短でこの仕事しか任せられない、期待できない」という思い込みも裏にはあったりします。あるいは悪気なく、優しさでもって負荷はかけられないから作業だけでいいよ、みたいな思い込みが背景にあったりすることがあります。

小田木:困りますね。

沢渡:もう一つ、本人もそうなんですけれども、活躍機会を知らないというのがあるんですよね。本人も「女性だから、あるいは育児期だから、自分は時短で事務作業をするしかない」という思い込みですね。事務作業が良い悪いではなくて、本人がパフォーマンスを上げられれば素晴らしい事なんですが、男性社会オンリーの統制型(ピラミッド型)の中で、男性と女性でそもそも会社が期待することが違う、だから情報を与えないとか。あるいは育成に投資しない、期待しないって言ったものが背景にあったりしますね。私の選択肢ってそもそも狭いよね、それが当たり前だと思い込んでしまう、こういう組織構造も大いにあります。

小田木:組織の中に「みんなで苦労する」という考えが浸透。困ったら助け合えず、働く時間の長さで評価するしかなく、チームで成果をあげるという観点が当事者及びマネージャーともに欠如していく。

沢渡:よく言われてることですね。とにかく遅くまで会社にいて、重要な意思決定は定時後タバコ部屋みたいなことが当たり前になってしまうと、まさにあの人は遅くまでいられないから戦力外だよね。そういう考え方になってしまったり、会議の時間設定もそうですし、コミュニケーションのやり方になってしまったりするわけですね。

小田木:どこからどのように紐解いて、課題に対して手を打っていくかというところなんですが、育成によって手が打てる部分に色づけしてみました。

意識バイアスが成果も成⻑も奪う

沢渡:当事者の育成とマネージメントに対する育成両面ありますね。

小田木:当事者の育成からまずは議論しましょう。真ん中に「時間で成果を出すやり方しか知らない」を起きましたが、当事者が育成の現場に立つと、これがかなり色んな所に影響しているなと思います。私自身も、ここにハマっていた一人なのでリアルすぎるのですが。
多くの方が、出産と言うタイミングを迎えるまでは仕事に邁進し、色んな事に時間をかけてやり遂げてきた。自分一人でそれができる。力もつくのが中堅ですし、それによってやりがいを得られる。時間をかけてやり遂げられることによって評価がされるし、成長実感も持てる。だから、ますますその仕事のやり方で仕事を邁進するというループに陥るケースが多いと思うんですよね。そうなると、働く時間が短くなると言うのが、とても仕事のやりがいや成長実感や成果の出し方に影響するんですよ。例えばここに対して、「チームで成果を出すためのコミュニケーション術」や「チームで成果を上げるためのマネジメント思考」などを、この育休復帰前後の段階できちんと教えて、仕事のやり方やメンバーとの関わり方、そして成果の出し方をアップデートするという、そういった機会提供が重要です。 そこから、一人で抱え込むというループから脱却し、チームで成果をあげるという仕事のやり方を、個人としても磨いていくという発想です。

沢渡:そうですね。ただこれって個人だけが頑張っても駄目で、受け入れる側の組織がそういう仕事のやり方にアジャストして行ったり、あるいは今までの仕事のやり方に依存してしまっていては本人活躍できないんですね。そこで組織やマネージャーの育成が大事になってくるわけです。

小田木:組織やマネージャーの育成についてはどこに着目しましょうか。

沢渡:「役割定義や仕事定義が曖昧」という点につきるのかなと思います。 これは女性活躍に関わらず、全国でリモートワーク・テレワーク併用にした結果・成果が出せる組織と、そうでない組織が二分化されていると思います。結果・成果がが出せていない組織は、そもそもマネージャーの役割あるいは個々の期待役割、これが中長期のタスク、これが短期のタスクというのを理解していなかったり、お互い何が得意で何が苦手で、何が困りごとで、どういうこと考えているのかが全く分からない状態。さらには、仕事の進捗管理はこのツールで、困り事があったら会の件はチャンネルで声をあげましょうとか。こういう進捗も含めた業務プロセス定義が曖昧、あるいは曖昧ではないかもしれないけれども、今までの対面で全員同じ時間や空間を共有できるやり方に依存してしまっている場合、それはうまくいかないわって話なんですね。きちんと役割の定義や仕事の定義、ビジョンミッションを定義した上で、コミュニケーションを設計しながら回していく。そのためのスキル育成もしていかないと、多様な人材が増えれば増えるほど、空中分解するという話だと思うんですね。ここが一番肝かなという風に思います。

小田木:成果の出し方もそうだし、チームで共有されている仕事のやり方や何を頑張る役割なのか、チームの中でその定義を明確にして合意するだとか、そういったプロセスもそうだし、仕事のやり方みたいなところをきちんとアップデートすることが基本のポイントなんですね。

沢渡:はい、当事者、組織・マネージャーの双方向でアップデートすることが重要ですね。


(2)ハイパフォーマーがぶつかる壁

沢渡:「育休後も、頑張る人は(勝手に)頑張る」まさに気合いと根性ですね。

小田木:完全に、気合と根性依存ですね。

沢渡:「頑張る」の考え方が前時代的なんですよね。全自体的な考え方だと、組織も個人も成長しないと思うんですよね。

小田木:「当事者:昨日遅くまでやりました」「上司:頑張ったなあ」みたいな。

沢渡:そして、その土俵には上がれるかどうかは、あなたの気合と根性と工夫で何とかしろということですよね。「一人で抱えながら頑張ってください」というのは、中長期で行くと自分の考慮してくれないなという気持ちになるので、いわゆる個々人の組織に対するエンゲージメントの低下につながってしまうんですね。エンゲージメントというキーワードとここをいかに紐づけるか、かと思うんです。

ハイパフォーマーがぶつかる壁

小田木:要因分解をしてみました。先ほどと違うキーワードで入ってくるのが、なんと「マネージャーになりたくない」。ハイパフォーマーはこれまでちゃんと評価されてきたにも関わらず、マネージャーにはなりたくないが入ってくるんですね。「マネージャー職に魅力を感じない」。マネージャーの役割定義が曖昧で、とにかくいろんな責任を抱えて頑張る人がマネージャー。やはり「チームで成果を上げる方法を知らない」ここにも入ってくるんですね。このマネージャーになりたくないと繋がって、「チームで成果を上げる方法を知らない」だから時間をかけて成果をあげて、目の前の仕事を一生懸命こなして頑張るところに行き着くわけです。結局、時間が足りなくて、かつ成果も出せないというわけです。 時間をかけて一生懸命頑張っているけれども、時間がかけられないということは、その頑張りは評価されないになってしまい、これが時間で評価されるというところも繋がってくると思うんです。沢渡さんは、この中で特にどんなブロックに着目しますか。

沢渡:「現マネージャー職に魅力を感じない」ではないですか。
これは両立期の女性だけの問題ではなく、男性も管理職にはなりたくないよね、管理職いやいやいやとんでもございませんみたいな話をするという、本質的な問題課題であるということにお気付き頂けたかなと思います。

小田木:若手もそうだよなとか、男女にかかわらず中堅ってみんなこういう状態にあるんじゃないかなとか、そういう感覚に陥りますね。

沢渡:はい、まさにそのマネージャー業務、マネジメントの定義をアップデートおよび細分化していく必要がある時代だと思うんですね。先ほど私がお見せした絵を思い出していただきたいのですが、統制型(ピラミッド型)モデルだけでは勝てなくなってきている。これはどういうことかというと、マネージメントのやり方も統制型(ピラミッド型)だけではなく、オープン型に最適化する必要が出てくるということです。コラボレーションを起こす、あるいは中長期の改善のような問題をマネジメントしていくためにはロングスパンになりますよね。そうすると、短期で成果を出させるだけのマネージャーではなく、例えば企業のブランド価値を上げていくとか、何か新しいものを育てていくとか、そういった重要度は高だけれども緊急度は低い業務に関しては、短期で成果を上げるやり方とではマネージメントも異なるはずなんですね。 明日から求められるテーマ、あるいはその仕事の種類によってマネージメントの定義を再定義していく。あるいは細分化し、マネージメントの業務を分担して得意分野のプロフェッショナルのマネージャーを複数置いてそこで連携し、コラボレーションで解決できるような仕事のやり方に再設計してことによって、一人一人の負担を減らしていく。丁寧なアップデートが、間違いなく必要なのかなって思います。

小田木:優秀な人材が力を生かして、組織の中でメンバーに対して影響力を発揮できる立場に行けないという課題感が、メンバーとしてだけでなく、マネージャーも一人で抱えて背負い込んで、とにかく頑張って成果出すというその働き方や、そもそもマネジメントの定義をアップデートする必要があるということですね。

沢渡:そもそも環境の変化が激しいですから、オールラウンダーのマネージャーを育てることにはますます難しくなるんですよ。専門分野は変わっていったり、ITも使いこなしたりするとことは難しいので、ミッションやプロジェクト単位でマネージャーを置いていくという、そのグラデーションのある設計は間違いなく求められているのかなと思います。

小田木:まさに「マネジメントの定義をアップデートする」「チームで成果をあげる」と合わせて、マネージメントに関してもコラボレーションで成果を上げていく仕事のやり方や、マネジメントのやり方を育成していたり、啓発して行ったりということが手段として入ってくるんですね。


(3)仕事の意欲と愛着を奪う情報不足

沢渡:今までの統制型(ピラミッド型)においては、その労働法制では正しいといえば正しいんですよね。だから、業務とみなされる行為は控えたほうがいいという考え方もあるんですよ。ここが本人との意思とのずれが起こらないようにするというところの工夫も大事ですし、場合によっては、社会保険労務士と話をして、この育休中であっても情報が与えられるような仕組みを、本人の意思に基づいて合意して提供していくというような方法を模索していくことは必要だと思います。

制度よりも風土改革が活躍のカギ

小田木:なぜ情報不足からモチベーションが低下してしまうのかというと、「復職後のキャリアが描けない」そして「職場のことがわからない」そして「上司の期待がわからない」 「対話をする機会を持たない」や「キャリアへの希望を言わない・言えない」が上げられます。上司も上司の立場から育休者の考えがわからないため「過剰に配慮する」しかなかったり、解らないから「期待しない」こういったところに繋がってきます。

この中で、育成によって解決できうるのは、こちらになります。

制度よりも風土改革が活躍のカギ

沢渡:当事者の部分の「情報を取りに行かない」もそうですが、主体性があるにも関わらず、環境制約でばっさり切れてしまうのは組織の方の問題が多いですよね。主体性って組織が悪気なく奪っている可能性があるんですよ。

小田木:本人の有無ではなく、備わったものが奪われているということでしょうか。

沢渡:奪われる、あるいは主体性を伸ばす邪魔をしている、今までのバイアスがあるんですね。統制型(ピラミッド型)の組織に起こりがちです。主体性を高める要素の話をさせて下さい。主体性を高める4要素、一つ目「権限」、二つ目「情報」、三つ目「環境」、四つ目「評価」なんですね。必ずこれを揃えれば良いというものはないんですけが、こういうものがあるだけでも主体性は持ちうるよという話です。まさに主体性とかエンゲージメントというキーワードと紐付けて、「権限」「情報」「環境」「評価」、悪気なく今までクローズしてしまっていて主体性を育む邪魔をしてこなかったかなという考え方も大事かなと思います。

小田木:これもやっぱり、当事者と組織・マネージャー双方向へのアプローチですよね。特に影響するのは直接の上司という部分でもあると思ので、役割定義、仕事の定義、などを通じてコミュニケーションを取ることで、過剰な配慮を防ぎ、期待しないというこの状況をどう防いでいく必要があります。対話する機会は「どうしたいか」「どうなりたいか」もそうだし、それを聞いていくというところも含めて、どうやって適切な機会にしていくのか、現場の仕事を回しながら、どんな機会であれば作れるのかというところを具体的に考えていくことが重要ですね。


まとめ

小田木:6個のギャップのうち、3つを取り上げさせていただきました。このギャップから「育休マネージメント」をどんなアプローチで考えていけたらいいのか、まとめさせていただきます。

ここから私たちにできることは?

小田木:当事者の課題、組織の課題、マネージャーの課題があり、どれか一つが悪いということはないというのはその通りです。
重要なのは、組織の観点、マネージャーの観点、そして当事者の観点でどういった育成や制度作り、取り組みができるかというところです。 例えば、組織の観点。
女性活躍による組織の成果と達成できないリスクを言語化しよう、これまさに、どんな問題意識を持っていて、どういった考えや経験を持っているかのかを言葉にして議論しあう機会にしていただければと思います。その上で目指すゴールに向かうための課題を洗い出し、プロセスを描いていくこと。そして育休マネージメントという観点で育休者だけの話ではなく、このライフイベントを契機にしながら、コミュニケーションや育成機会をどうやって作っていこうか、このように考えていただける思います。

沢渡:これから、全員が正社員、全員が同じ時間、同じ場所に集まって仕事をやっていく機会はどんどん少なくなっていくと思います。環境が違う、立場が違う、プロフェッショナリティが違う人たちが、お互いに助け合いながら成果を出せるマネージメントにアップデートしてく必要あるのかなと考えます。

小田木:皆様、最後までありがとうございました。


沢渡あまね

<講師> 沢渡 あまね
あまねキャリア株式会社 代表取締役CEO/なないろのはな 取締役/株式会社NOKIOO 顧問

日産自動車、NTTデータ(オフィスソリューション統括部)、大手製薬会社などを経て、2014年秋より現業。情報システム部門、ネットワークソリューション事業部門、広報部門などを経験。現在は企業の業務プロセスやインターナルコミュニケーション改善の講演・アドバイザー・執筆活動などを行っている。NTTデータでは、ITサービスマネージャーとして社内外のサービスデスクやヘルプデスクの立ち上げ・運用・改善やビジネスプロセスアウトソーシングも手がける。これまで300を超える企業・自治体・官公庁で、働き方改革、マネジメント変革、組織改革の支援および経営層・管理職・中堅人材の育成も行う。これまで指導した受講生は4,000名以上。 著書「バリューサイクル・マネジメント」「職場の問題地図」「マネージャーの問題地図」「職場の科学」ほか多数。


株式会社NOKIOO 取締役 小田木朝子

<講師> 小田木 朝子
株式会社NOKIOO 取締役/経営学修士

ウェブマーケティングの法人営業などを経て、NOKIOO創業メンバーとして参画。教育研修事業担当役員。2011年、中小企業診断士資格取得。2013年、自身の経験を活かし女性の社会参画支援事業『ON-MOプロジェクト』を立ち上げ、会員6,000名を超えるネットワークを育成。2016年12月『一般社団法人 育勉普及協会』を設立。2020年、オンライン教育サービス『育休スクラ』を立ち上げ、経験学習による人材開発・オンラインを活用したキャリア開発とアクティブラーニングを法人・個人向けに提供。グロービス経営大学院修了。
著書「人生の武器を手に入れよう!働く私たちの育休戦略」。
●音声メディアVOICYで「今日のワタシに効く両立サプリ」配信中 https://voicy.jp/channel/1240
●アクティブ・ブック・ダイアローグ®認定ファシリテーター


研修に関するお問い合わせ

株式会社NOKIOO法人研修サービスWebサイトにて、資料ダウンロードやお問い合わせがいただけます。



参考書籍について

バリューサイクル・マネジメント ~新しい時代へアップデートし続ける仕組みの作り方

バリューサイクル・マネジメント ~新しい時代へアップデートし続ける仕組みの作り方

私たちの働き方は本当によくなったのか?
DX、SDGs、イノベ―ション、ダイバーシティ、女性活躍推進、エンゲージメント、エンプロイアビリティ……個々のキーワードや施策が自己目的化、「仕事ごっこ」化していないか?新しい時代へアップデートしていくために本当になすべきことを、累計25万部・問題地図シリーズの生みの親が集大成。一企業だけ、一部門だけ、一個人だけの努力では成し遂げられない価値創造へ踏み出すための、変革の教科書。

関連記事

TOP